物流・運送業が使える補助金まとめ【2026年最新版】
車両・DX・人材確保

この記事のポイント
物流・運送業は深刻なドライバー不足と2024年問題(時間外労働の上限規制)という二重の課題に直面しています。省力化投資補助金・デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)・働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)などを組み合わせることで、制度によっては数百万円〜1,000万円超の支援を受けながらDX推進・人材確保を進めることができます。本記事では主要制度を公式公表の金額・補助率付きで解説します。

物流・運送業向け補助金の全体像

物流・運送業は経済活動を支える基盤産業ですが、ドライバー不足・燃料費高騰・2024年問題(働き方改革関連法による時間外労働規制)が重なり、業界全体が大きな転換点を迎えています。国はこうした課題に対応するため、物流業向けの多様な補助金・助成金制度を整備しています。

物流・運送業が活用できる補助金のカテゴリは主に4つです。①省力化・自動化投資(AGV・ロボット・配送最適化)、②デジタル化・DX推進(配送管理システム・デジタコ等)、③設備・車両更新(EV・燃費改善車両等)、④人材確保・雇用促進(ドライバー確保・非正規の正規化)です。

制度名補助上限額補助率主な用途
中小企業省力化投資補助金カタログ注文型:200万〜1,000万円(賃上げ達成で最大1,500万円)/一般型:最大1億円1/2以下無人フォークリフト・ピッキングシステム等の省力化製品
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)通常枠:最大450万円1/2以内(要件充足で2/3以内)配送管理・動態管理・デジタコ連携システム
ものづくり補助金750万〜2,500万円(グローバル枠3,000万円)中小1/2(小規模2/3)新物流サービス開発・設備投資
中小企業新事業進出補助金従業員数・枠により異なる(公募要領参照)公募要領参照新サービス展開・EC物流参入(事業再構築補助金の後継)
働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース・運送業等)成果目標に応じ25万〜250万円+加算3/4(要件充足で4/5)デジタコ導入・労働時間削減・勤務間インターバル
キャリアアップ助成金正社員化コース:80万円/人(中小・重点支援対象者)定額ドライバー・事務の正規雇用転換
業務改善助成金30万〜600万円(コース・人数による)4/5(事業場内最低賃金1,050円以上は3/4)機器購入+賃金引上げ

※補助額・補助率は公募回・申請枠によって異なります。最新の公募要領を必ずご確認ください。

中小企業省力化投資補助金(自動化・省力化設備)

中小企業省力化投資補助金(事務局:中小企業基盤整備機構)は、人手不足に悩む中小企業等の省力化投資を支援する制度で、カタログに登録された汎用製品から選んで導入する「カタログ注文型」と、個別の現場に合わせた設備導入・システム構築等を支援する「一般型」(補助上限最大1億円・公募回制)の2類型があります。人手不足が深刻な物流・倉庫業は、この補助金の活用ニーズが特に高い業種です。

物流・倉庫業で活用できる省力化製品(カタログ掲載カテゴリの例)

カタログ注文型の製品カタログには、物流・倉庫の現場で使える以下のようなカテゴリが登録されています(公式製品カタログページで掲載を確認済み。2026年7月時点)。

最新の対象製品・カテゴリは公式サイトの製品カタログで確認してください。

従業員規模(カタログ注文型)補助上限額補助率
5名以下200万円(賃上げ要件達成で300万円)1/2以下
6〜20名500万円(同750万円)
21名以上1,000万円(同1,500万円)

※2026年3月19日の制度改定後の値です。2回目以降の交付申請には累計補助上限額や追加要件があります。詳細は公式サイトをご確認ください。

公式の補助率・上限に基づく試算(モデルケース)

カタログに登録されたデジタルピッキングシステム等の省力化製品を対象経費600万円で導入した場合:補助率1/2以下で最大300万円が補助対象となります(従業員数に応じた補助上限200万〜1,000万円の範囲内)。
※公式公表の補助率・上限額から機械的に算出した試算であり、特定の事業者の受給実績ではありません。

デジタル化・AI導入補助金(配送管理・デジタコ連携)

デジタル化・AI導入補助金(2026年度からIT導入補助金より名称変更)は、物流・運送業のデジタル化を幅広く支援します。配送管理システム(TMS)・デジタルタコグラフ連携ソフト・動態管理システムなど、ドライバーの労務管理や配送効率化に使えるITツールの導入が対象となり得ます(対象ツールはIT導入支援事業者が登録したツールから選定します)。

物流・運送業で活用が考えられるITツールの例

申請枠補助上限額補助率
通常枠5万〜150万円未満(1プロセス以上)/150万〜450万円以下(4プロセス以上)1/2以内(賃上げ等の要件充足で2/3以内)
インボイス枠(インボイス対応類型)ソフトウェア〜350万円50万円以下の部分3/4以内(小規模事業者4/5以内)・50万円超の部分2/3以内
セキュリティ対策推進枠5万〜150万円1/2以内(小規模事業者2/3以内)

デジタル化・AI導入補助金は、IT導入支援事業者(登録事業者)を通じて申請します。配送管理システムのベンダーがIT導入支援事業者として登録している場合は、ベンダー経由でスムーズに申請できます。

ものづくり補助金(設備・新サービス)

ものづくり補助金は中小企業が革新的な製品・サービス開発や生産プロセス改善のために設備投資を行う際に活用できる補助金です。物流業では新たな物流サービスの開発・冷凍冷蔵設備の導入・自社倉庫の設備更新などへの活用が考えられます。

物流・運送業で活用が考えられる投資の例

申請枠(現行)補助上限額補助率
製品・サービス高付加価値化枠750万〜2,500万円(従業員規模による)中小1/2(小規模2/3)
グローバル枠3,000万円公募要領参照

※現行の公募は上記2枠の構成です。補助上限額・要件の詳細は公式サイトの公募要領をご確認ください。

2024年問題対応の助成金・補助金

2024年4月から、トラックドライバーへの時間外労働時間の上限規制(年間960時間)が適用されました。これにより一人当たりの輸送量が減少し、ドライバー一人ひとりの生産性向上と労働環境改善が急務となっています。国はこうした課題に対応する支援策を講じています。

働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース・運送業等)

働き方改革推進支援助成金の「業種別課題対応コース(運送業等)」は、時間外労働の上限規制への対応が課題となっている運送業等(自動車運転の業務に従事する労働者を雇用する中小企業事業主)を対象に、労働時間削減や勤務間インターバル制度導入に向けた環境整備の費用を助成する制度です(令和8年度・厚生労働省)。

助成対象となる取組(改善事業)には、労務管理用ソフトウェア・労務管理用機器・デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新や、労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新、外部専門家によるコンサルティング、就業規則の整備などが含まれます。

成果目標(1つ以上選択)助成上限額
① 月60時間を超える36協定の時間外・休日労働時間数の削減150万〜250万円(削減幅による。月80時間超→月60時間以下で250万円)
② 所定外労働時間数の削減(労働者1人あたり)5時間以上10時間未満:50万円/10時間以上:100万円(①と同時選択不可)
③ 年次有給休暇の計画的付与制度の新規導入25万円
④ 時間単位の年次有給休暇制度+特別休暇の新規導入25万円
⑤ 10時間以上の勤務間インターバルの導入休息10時間以上11時間未満:150万円/11時間以上:170万円
公式リーフレット掲載の活用例(運送業等)

・積載量の多いトレーラーを導入 → 一度で多くの荷物を運べるようになったことで、労働時間が削減された
・デジタル式運行記録計を導入 → 運転日報や出勤簿の作成が自動化されたことにより、労働時間が削減された
※出典:厚生労働省「令和8年度 働き方改革推進支援助成金 業種別課題対応コース(運送業等)のご案内」(課題別にみる助成金の活用事例)

物流効率化への公的支援(国土交通省)

国土交通省は、改正物流効率化法に基づく支援をはじめ、物流標準化・物流DXの推進など物流効率化の施策を展開しており、中小物流事業者向けの補助事業の公募情報も随時公開しています。公募の内容・時期・対象は年度により異なるため、最新情報は国土交通省の物流施策ページで確認してください。

EV車両導入の補助(CEV補助金)

電気自動車(EV)等のクリーンエネルギー自動車への更新を支援する「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」は、一般社団法人次世代自動車振興センターが交付業務を行っています(経済産業省事業の執行団体)。補助対象車種・補助額は年度により異なるため、公式サイトで最新の対象車両・金額を確認してください。都道府県・市区町村が独自のEV導入支援を行っている場合もあります。

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雇用・人材確保の助成金

ドライバー不足が深刻な物流業では、雇用に関する助成金も積極的に活用することが重要です。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)

アルバイト・契約社員のドライバーや倉庫スタッフを正規雇用に転換した場合に受給できます(令和8年度)。

人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備助成コース)

ドライバー・倉庫スタッフの定着率向上(離職率の低下)に取り組む事業主を支援する助成金です。現行の中心コースは「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」で、①雇用管理制度の導入(賃金規定制度・諸手当等制度・人事評価制度=各40万円、職場活性化制度・健康づくり制度=各20万円、複数導入時の上限80万円。賃金要件充足で増額)、②業務負担軽減機器等の導入(対象経費の1/2・上限150万円。賃金要件充足で増額)が対象です。雇用管理制度等整備計画を作成して労働局の認定を受け、離職率の低下目標を達成することが要件となります。

業務改善助成金

事業場内最低賃金を引き上げた上で、生産性向上に資する設備・機器等を導入した場合に、その費用の一部を助成します。引上げ額に応じて50円/70円/90円の3コースがあり、助成上限額は引き上げる労働者数に応じて30万〜600万円(90円コースの最大値)、助成率は事業場内最低賃金1,050円未満で4/5・1,050円以上で3/4です。物流現場の生産性向上と処遇改善を両立できます。設備投資等は交付決定後に実施する必要があり、従業員を雇用していることが前提です。

補助金活用の流れ(ステップ)

  1. 課題と投資計画を整理する どの業務に課題があるか(ドライバー不足・配送効率・デジタコ未整備等)を明確にし、対応する補助金を絞り込みます。
  2. GビズIDを取得する(デジタル化・AI導入補助金・省力化投資補助金等の電子申請で必要) GビズIDプライムは、オンライン申請(マイナンバーカード利用)なら速やかに発行されますが、書類申請は審査に最大1か月かかるため、早めに手続きを行いましょう。
  3. 公募スケジュールを確認し、必要書類を準備する 確定申告書・決算書・見積書・事業計画書(補助金によって異なる)を準備します。
  4. 交付決定後に発注・導入する 補助金の採択・交付決定通知を受けた後に発注・契約を行います。交付決定前の発注は補助対象外です。
  5. 実績報告・補助金受給 設備導入・サービス開始後に実績報告書を提出し、確認後に補助金が振り込まれます。補助金は後払いのため、資金繰りに注意が必要です。

よくある質問(FAQ)

個人事業主の運送業者(個人ドライバー)でも補助金を申請できますか?
はい、申請できます。デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)・小規模事業者持続化補助金・業務改善助成金は個人事業主でも対象です。ただし、業務改善助成金は従業員(労働者)を雇用していることが前提のため、従業員がいない場合は対象外です。一方、デジタル化・AI導入補助金や持続化補助金は一人事業主でも申請可能です。
EV(電気自動車)トラックへの更新は補助対象になりますか?
EV等のクリーンエネルギー自動車への更新は「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」(交付業務:一般社団法人次世代自動車振興センター)の対象となる場合があります。補助対象車種・補助額は年度により異なるため、公式サイト(cev-pc.or.jp)で最新の対象車両・金額を確認してください。また、都道府県・市区町村独自のEV導入支援制度と組み合わせることで負担を軽減できるケースがあります。
デジタルタコグラフの導入にどの補助金が使えますか?
働き方改革推進支援助成金の業種別課題対応コース(運送業等)では、助成対象の取組(改善事業)に「デジタル式運行記録計の導入・更新」が公式に明記されており、労働時間削減等の成果目標とセットでデジタコ導入費用の助成を受けられます(補助率3/4、30人以下の要件充足で4/5)。また、デジタコ連携の運行管理ソフト・動態管理システムは、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象となる場合があります。デジタコ購入に合わせて事業場内最低賃金を引き上げる場合は業務改善助成金の活用も考えられます。
2024年問題への対応として、どの補助金・助成金が最も効果的ですか?
複数の制度を組み合わせることが効果的です。①中小企業省力化投資補助金(倉庫自動化で一人当たり生産性向上)②デジタル化・AI導入補助金(配送管理・動態管理でムダ排除)③働き方改革推進支援助成金の業種別課題対応コース・運送業等(労働時間削減・勤務間インターバル導入・デジタコ導入)④キャリアアップ助成金(ドライバーの正規化・定着促進)の組み合わせが、2024年問題への総合的対応として考えられます。
倉庫業と運送業(配送部門)を兼営していますが、どちらの名義で申請すべきですか?
補助金を活用する事業・設備が主にどちらの業務に使われるかで判断します。倉庫内の自動化設備(AGV等)であれば倉庫業として申請するのが自然です。複数の事業を行っている場合でも、法人格が一つであれば同一法人名義での申請になります。事業計画書には主たる用途と効果を明確に記載しましょう。
荷主企業(メーカー・商社)が自社物流部門の補助金を申請できますか?
はい、自社物流部門を持つメーカー・商社等でも、中小企業に該当する場合は多くの補助金を申請できます。また、物流子会社として別法人を設立している場合は、その子会社が補助金申請の対象事業者となります。国土交通省は荷主・物流事業者の連携による物流効率化を推進しており(改正物流効率化法に基づく支援等)、関連する支援策は国土交通省の物流施策ページで確認できます。
省力化投資補助金でドライバー業務の支援ロボット(荷降ろしアシスト等)は対象になりますか?
中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型)は、カタログに登録された製品の中から対象製品を選ぶ方式です(事務局:中小企業基盤整備機構)。公式の製品カタログには「パワーアシストスーツ」「バッテリー式階段運搬台車」などの荷役負担軽減カテゴリの登録が確認できます(2026年7月時点)。導入したい製品がカタログに登録されているか、公式サイトの製品カタログで確認した上で申請計画を立てることをお勧めします。
補助金を受給した後、何か制約はありますか?
補助金の種類によって異なりますが、一般的に「財産処分制限期間」(補助対象設備を補助目的以外に使用・売却・廃棄することへの制限)があります。処分制限期間は補助金や財産の種類によって異なるため、各補助金の交付規程・公募要領で確認してください。また、補助金によっては賃上げ等に関する事後的な要件・報告義務が課されるケースもあります。