IT・デジタル企業は、ソフトウェア開発・クラウドサービス・AIシステム・Webサービスなどを手掛ける事業者を指します。これらの企業は「設備投資」より「人件費・開発費」の比率が高いため、補助金の活用が難しいと思われがちですが、実際には多くの制度が適用可能です。
また、IT企業がデジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金)の「IT導入支援事業者」として登録し、他の中小企業のデジタル化を支援することで、自社の新規顧客開拓と事業拡大につなげる方法もあります。まずは「自社の規模・目的に合う制度はどれか」を下のマップで確認してください。各制度の詳しい解説は個別記事に委ねます。
| 制度名 | こんなIT企業・用途に | 補助上限額・補助率(現行) | 詳細 |
|---|---|---|---|
| 中小企業成長加速化補助金 | 売上高10億円以上・100億円超を目指す大型投資(投資額1億円以上) | 5億円・1/2以内 | 公式ポータル |
| ものづくり補助金 | 革新的なサービス・システムの開発(IT企業も対象) | 高付加価値化枠750万〜2,500万円(従業員規模別)/グローバル枠3,000万円・中小1/2(小規模2/3) | 解説記事 |
| デジタル化・AI導入補助金 (旧:IT導入補助金) | 自社の業務効率化ツール導入/支援事業者としての活用 | 通常枠5万〜450万円・1/2以内(小規模2/3以内) | 解説記事 |
| 中小企業新事業進出補助金 | 新市場・新分野への進出(事業再構築補助金の後継) | 従業員数・枠により異なる(公式要領参照) | 公式サイト |
| 小規模事業者持続化補助金 | フリーランス・小規模IT事業者の販路開拓 | 通常枠50万円(特例併用で最大250万円)/創業型200万円・2/3 | 解説記事 |
| 人材開発支援助成金 | エンジニア研修・リスキリング | 経費助成45〜75%+賃金助成(コース・訓練区分による) | 解説記事 |
| キャリアアップ助成金 | 有期契約・派遣エンジニアの正社員化 | 正社員化コース:中小80万円/人(重点支援対象者) | 解説記事 |
※補助額・補助率は公募回・申請枠・従業員規模によって異なります。申請前に必ず各制度の最新の公募要領をご確認ください(各出典は記事末尾に記載)。
中小企業成長加速化補助金は、賃上げへの貢献・輸出による外需獲得・地域経済への波及効果が大きい「売上高100億円超」を目指す中小企業の大胆な投資を支援する大型補助金です。補助上限は5億円と中小企業向け補助金の中でも最大級で、対象業種には情報通信業も含まれます。公式情報は中小機構の「100億企業成長ポータル」に集約されています。
注意したいのは、この制度はスタートアップ向けの制度ではないという点です。対象者は「売上高10億円以上100億円未満」の中小企業に限られ、投資額1億円以上の大規模投資計画が前提となります。創業期・シード期のIT企業は、ものづくり補助金や持続化補助金など他の制度を検討してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助上限額・補助率 | 5億円・1/2以内 |
| 対象者 | 売上高100億円を目指す中小企業(売上高10億円以上100億円未満) |
| 主な要件 | ①「100億宣言」がポータルサイトに公表されていること(公表手続きは通常2〜3週間) ②投資額1億円以上 ③賃上げ要件(従業員1人当たり給与支給総額の年平均上昇率4.5%以上の目標を含む今後5年程度の事業計画。未達成の場合は未達成率に応じた補助金返還あり) |
| 事業期間 | 交付決定日から24か月以内 |
| 対象経費 | 建物費・機械装置費・ソフトウェア費(クラウドサービス利用含む・単価100万円(税抜)以上に限る)・外注費等 |
| 審査 | 1次審査(書面)→2次審査(経営者によるプレゼン・外部有識者が評価) |
公募は回次制です。1次公募の採択倍率は約6.0倍、2次公募(2026年3月締切)には872件の有効申請があり、採択結果は2026年8月上旬に公式ポータルで公表予定と案内されています。最新の公募スケジュールは公式ポータルで確認してください。
ものづくり補助金は「ものづくり」という名称ですが、ソフトウェア・システム開発業も対象です。革新的な製品・サービスの開発に取り組む中小企業を支援する制度で、IT企業が新しいサービスの開発に必要なシステム構築・設備投資を行う際に活用できます。
2026年の第23次公募時点の申請枠は「製品・サービス高付加価値化枠」と「グローバル枠」の2つです。高付加価値化枠の補助上限は従業員規模別に750万〜2,500万円(補助率は中小1/2・小規模2/3)、海外展開を伴う場合のグローバル枠は上限3,000万円です。かつて設けられていたデジタル関連・省力化関連の枠や類型は現行の公募には存在せず、人手不足対応の省力化投資は別制度「中小企業省力化投資補助金」に整理されています。直近の採択率は第22次で37.5%、直近5回はおおむね3割台です。枠の詳細・申請手順はものづくり補助金の解説記事を参照してください。
機械装置・システム構築費・技術導入費・専門家経費・外注費・クラウドサービス利用費などが対象になります。IT企業がサービス開発で使うシステム構築費・クラウド利用費も対象経費に含まれますが、人件費(自社エンジニアの給与・工数)は対象外である点に注意が必要です。
IT企業にとって特筆すべきなのが、デジタル化・AI導入補助金(旧:IT導入補助金。2026年度から名称変更)を「IT導入支援事業者」として活用する方法です。自社が開発・販売するITツールやシステムを本補助金の補助対象製品として登録することで、中小企業クライアントに補助金を活用した導入提案ができるようになります。導入側の中小企業には、通常枠で補助率1/2以内(小規模事業者2/3以内)・5万〜450万円の補助があります(枠別の詳細は本補助金の解説記事を参照)。
IT導入支援事業者とは、生産性向上を目指す中小企業・小規模事業者等がITツールを導入する補助事業を、円滑に遂行するための支援を行う事業者です。事務局に登録申請を行い、事務局および外部審査委員会による審査の結果、採択される必要があります。登録形態は「法人(単独)」と「コンソーシアム」の2つです。
登録は公式サイトの電子申請画面から「仮登録 → 本登録 → ITツール登録」の順に進めます。ITツールは事務局の審査を経て補助対象ツールとして掲載されます。要件・手続きの詳細は公式サイトの「IT導入支援事業者登録マニュアル」で確認してください。
コロナ禍の業態転換支援で知られた事業再構築補助金は、新規の公募を終了しています。現在、既存事業とは異なる新市場・新分野への進出を伴う設備投資の受け皿となっているのは、後継制度の中小企業新事業進出補助金(中小企業基盤整備機構)です。
IT企業では、受託開発会社が自社サービスを立ち上げる、システムインテグレーターが新分野のサービス事業に進出する、といった「既存事業と異なる新事業への挑戦」を伴う投資が本制度の想定領域です。補助上限・補助率は従業員数・申請枠により異なるため、検討の際は公式サイトで最新の公募要領を確認してください。
| 進出の方向 | 投資の例 |
|---|---|
| 受託開発 → 自社サービス | サービス提供に必要なシステム構築・設備投資 |
| 国内 → 海外市場 | 海外展開に伴う設備・システム投資 |
| BtoBシステム → 新分野のサービス | 新事業に必要な設備・環境構築 |
※対象となる経費・要件(新規性・付加価値額要件等)は公募要領で細かく定められています。自社の計画が「新事業進出」の定義に該当するかを、まず公式要領で確認することをおすすめします。
IT企業にとって最大の経営課題のひとつが「IT人材の確保・育成」です。以下の雇用・人材育成関連助成金は、エンジニア採用・スキルアップ・定着促進に直接活用できます。
人材開発支援助成金の「人への投資促進コース」では、デジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自発的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型の研修サービス)等を実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。訓練区分には「高度デジタル人材訓練」や、IT分野未経験者の即戦力化のためにOJTとOFF-JTを組み合わせる「情報技術分野認定実習併用職業訓練」などがあり、IT企業のエンジニア育成に直接使えます(助成率・限度額は訓練区分により異なるため、公式パンフレットで確認してください)。
| コース名(令和8年度・中小企業) | 助成内容 |
|---|---|
| 人材育成支援コース | 経費助成45%(有期契約労働者等の訓練は70%・有期実習型訓練は75%)+賃金助成1人1時間800円。経費助成限度額は訓練時間数に応じて1人1訓練15万〜50万円 |
| 事業展開等リスキリング支援コース | 事業展開・DX・GX対応の訓練(OFF-JT)が対象。経費助成75%+賃金助成1人1時間1,000円 |
| 人への投資促進コース | 高度デジタル人材訓練・情報技術分野認定実習併用職業訓練・定額制訓練・自発的職業能力開発訓練等(助成率は訓練区分別) |
いずれのコースも、訓練の実施前に職業訓練実施計画届の提出が必要です。
自社で雇用する有期契約のエンジニアを正社員に転換した場合、令和8年度は「重点支援対象者」で1人あたり中小企業80万円(40万円×2期)、それ以外で40万円が支給されます。重点支援対象者には派遣労働者の直接雇用も含まれます。一方、業務委託契約のフリーランスをそのまま新規採用する場合は対象外です(対象はあくまで自社の有期雇用労働者等の転換・派遣労働者の直接雇用)。転換後の賃金3%以上増額、キャリアアップ計画の事前提出などの要件があります。
高年齢者(60歳以上)・障害者・母子家庭の母等の就職困難者を、ハローワーク等の紹介で継続雇用した場合に受給できる助成金です。支給額は類型により1人あたり60万〜240万円(中小企業。最大の240万円は重度障害者等を雇用した場合で、3年間にわたり支給)。IT企業でも在宅勤務・テレワーク対応の採用で活用できます。
IT・デジタル企業が補助金を効果的に活用するためには、いくつかの重要なポイントがあります。製造業や小売業と異なり、IT企業特有の申請上の注意点を事前に把握しておくことが重要です。
IT企業の開発コストの大部分を占める「自社エンジニアの人件費(給与)」は、ほとんどの補助金で補助対象外です。一方で、外注費(他社への開発委託費)やクラウドサービス利用費は補助対象になる場合があります。補助金の申請前に、どのコストが対象になるかを必ず確認してください。
ものづくり補助金や中小企業新事業進出補助金など、国の補助金の電子申請には「GビズID(gBizIDプライム)」が必要です。マイナンバーカードとGビズIDアプリを使ったオンライン申請なら速やかに発行されますが、書類申請の場合は審査に最大1か月かかります。公募が始まってから慌てないよう、申請を検討し始めた段階で先に取得しておきましょう。
※本記事の情報は2026年7月時点のものです。補助金の内容・要件は変更される場合があります。申請前に必ず公式ポータルの最新情報をご確認ください。